0.6年11月26日付「東京スポーツ」にこんな見出しの記事があった。
「ディープ 年上の女(牝馬)に弱い?!」。
これは明らかに「暇ネタ」「埋め草」には違いないのだが、男女混合レースを研究している西門慶ニとしてはすておくことはできない。
記事は、ディープが負けた《有馬記念》《凱旋門賞》には年上の牝馬が出走していたことから「ディープ 年上の女(牝馬)に弱い?!」と噂されている、という内容となっている。この気になる噂の出所、ささやかれているエリア等のディテールになにも触れないままに、本紙は競馬専門家(?)に直撃! とある。
で、コメントを求められたのが合田直弘と長谷川雄啓の両氏。「ディープ=マザコン説、年上の牝馬に弱いのかも」(合田氏)、「女にやさいしいなら種馬としてはいいのでは」(長谷川氏)。
「暇ネタ」に合わせたナイスなノリ・コメント、ハイ記事一丁上がり。しかし…はっきりいって、「東京スポーツ」はワシに聞きにこい! ちゅうねん! 『月刊競馬王』(白夜書房)に「男女混合レース」の構造について書きはじめてはや一年。はっきり答はでているのだ、読んでないな…。
馬に限らず、少しでも集団で生活する動物のことを調べたことのある人なら、群れの中では、年上のメスの人気が高く、特に優位のオスほど高齢のメスと交尾したがる傾向にある、ということはイロハのイなのである。
これはディープの個性を超えて、趣味判断ではなく、完全な一般法則なのだ。
また、メスがどのオスを認めて、どのオスに期待するかで、群れの秩序が保たれる、という観察結果を使って生まれたのが、「キング&クイーンの法則」なのである、というわけだ。
「男女混合レース」がその他のレースと本質的にルールが違う、といえるのは、個々の馬の能力差というファクターに加えて、牝馬たちの「意思」が関係してくるからであり、特に高齢の牝馬がメンバーにいる場合には、物理的条件や能力差と、馬たちの関係性(うまカンケイ)の間にできる新たな均衡状態によってレース結果が違ってくる可能性が高まるのである。
本物の専門家、楠瀬良博士に聞いてみればよい。だだし、「それがレースの着順に影響しているか否かは(いまのところ)確認されていません」というオチがつくだろうが。
「暇ネタ」はそれはそれで結構です。しかし、せっかく「ディープ 年上の女(牝馬)に弱い?!」というヒントが世に出ようとしている時に、このような適当なノリの記事がでてしまうと、またしてもすべては忘却の彼方に、ということの繰り返しとなってしまうのだ。自分の頭越しに、てきとーなこと、がいわれないようにするためにも、はやくまとまった解説書を出版する必要があるね、これは。
【補足】《有馬記念》《凱旋門賞》は牝馬というファクターとともに、「エイジ・グループ」というファクターもあったことを忘れてはいけない。《有馬記念》ではディープ自身が3歳、《凱旋門賞》ではレイルリンクという3歳馬といっしょに走っていた。レースの過去データーに年齢別連付成績が乗っているが、「エイジ・グループ」という考え方を用いれば、競馬を見る目はまた大きくかわるのだ、といっておこう。
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